技人国ビザの申請では、
技人国の許可要件に適合していることを、
資料によって明らかにする必要があります。
しかし、入管が案内している必要書類だけでは、
許可要件を満たしていることが十分に伝わらない場合があります。
そこで重要になるのが、
理由書をはじめとする補足資料です。
補足資料には、大きく分けて2つの役割があります。
① 入管が案内している必要書類だけでは見えにくい事実を可視化すること
② 入管に懸念を持たれやすい事情について、先回りして説明し、審査上の疑問を解消すること
本記事では、技人国申請で審査される基本要件に沿って、補足資料がどのような役割を果たすのかを解説します。
1. 技人国に該当する業務であること
申請人が従事する業務が、
「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務であることを資料によって示す必要があります。
技人国に該当するのは、次のような業務です。
・工学などの自然科学や、法律学・経済学などの人文科学の知識を使う業務
・翻訳・通訳、語学の指導、海外取引など、外国の文化に基づく考え方や感受性を必要とする業務
一方、専門的な知識や技術を必要としない業務や、繰り返しの訓練でできるようになる業務(例:配膳、清掃、荷物の運搬)が中心の場合は、技人国に該当しません。
【入管庁の不許可事例】
■ 申請の内容
日本で商学を専攻して大学を卒業した者が、新しく設立されたホテルに採用されるとして申請
■ 入管の判断
従事する予定の業務は、駐車誘導やレストランでの料理の配膳・片付けだった
→ 技人国に該当する業務とは認められず、不許可
出典:出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」別紙5
◆必要書類
(1)雇用契約書(労働条件通知書)
申請人がどのような業務に従事するのかを明らかにします。
(2) 会社案内・パンフレット等(どんな事業をしているのか)
どのような事業を行っている会社なのかを明らかにします。
※ 通訳・翻訳など、主に語学力を使う仕事の場合
申請人が業務で使用する言語についてCEFR B2相当の言語能力を有していることも、在留資格該当性の判断に関係します。
この言語能力がない場合は、「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められません。
そのため、カテゴリー3・4の会社では、業務で使用する言語についてCEFR B2相当の言語能力を有することを証する資料を提出します。なお、カテゴリー1・2の会社でも、審査の過程で提出を求められることがあります。
例1:ベトナム人の社員が、日本語とベトナム語の通訳をする場合
・日本語 → 日本語能力試験(JLPT)N2以上の合格証明書 など
・ベトナム語 → 本人の母国語なので、試験の証明はいりません
例2:ベトナム人の社員が、日本語と英語の通訳をする場合
・日本語 → 日本語能力試験(JLPT)N2以上の合格証明書 など
・英語 → 母国語・公用語ではないので、原則として、英語についてCEFR B2以上の能力があることを試験結果などで証明します。
◆補足資料
雇用契約書の記載だけでは、具体的な業務内容や、その業務に十分な業務量があるのかまで分からないことがあります。そこで、次のような補足資料によってこれらを補います。
(1) 職務内容説明書(何をするのか)
雇用契約書だけでは分からない具体的な業務内容や業務の専門性を示し、申請人が従事する業務が技人国に該当することを明らかにします。
(2)一日・一週間のスケジュール(どのくらいするのか)
一日の各業務の時間配分や業務割合を示し、職務内容説明書に記載した技人国に該当する業務が主たる業務であり、十分な業務量があることを明らかにします。
(3) 会社の組織図(誰がどの仕事を担当しているのか)
会社の指揮命令系統や申請人の配属先、他の従業員との業務分担を示し、申請人が実際に技人国に該当する業務を担当する立場にあることを明らかにします。
特に、技能実習生や特定技能外国人などが同じ職場で働いている場合には、申請人との業務分担を明確にする資料として重要です。
(4)業務量を客観的に示す資料(実際にどのくらい仕事があるのか)
例1:翻訳・通訳業務の場合
単に「外国人客が多い」と説明するだけでなく、宿泊実績データなどによって、外国人客の人数や使用言語を示し、十分な業務量があることを明らかにします。
例2:会計・労務管理業務の場合
従業員数や会社の規模などを示し、その業務を主な仕事として行うだけの十分な業務量があることを明らかにします。
2. 本人の学歴・実務経験等が基準を満たしていること
申請人が、学歴・実務経験等の基準を満たしていることを、資料によって示す必要があります。
◆必要書類
(1) 履歴書
申請人の学歴や職歴を明記したもの
(2) 次のいずれか
① 学歴で申請する場合
↳ 卒業証明書(大学・専門学校などを卒業したことを証明します。)
↳ 本邦の専修学校を修了した者は、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書も提出します。
② 実務経験で申請する場合
↳ 在職証明書(職歴・期間を勤務先が証明する資料)
※技術・人文知識は10年以上、国際業務は3年以上の実務経験が必要です。
※ただし、大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導をする場合は、実務経験は不要です。
※学校での専攻期間を実務経験年数に算入する場合は、その科目を専攻した期間が記載された学校の証明書も提出します。
③ IT告示の試験・資格を利用する場合
↳ 法務大臣が特例告示で定める情報処理技術に関する試験の合格証書、または資格証書。
◆補足資料
卒業証明書や在職証明書だけでは、具体的に何を学んだのか、どのような業務経験があるのかまで十分に分からないことがあります。そこで、次のような補足資料によってこれらを補います。
(1) 成績証明書(どの科目を学んだか)
学歴で申請する場合は、申請人が実際に履修した科目を示します。
(2)シラバス(その科目の具体的な内容)
成績証明書の科目名だけでは分からない、授業の具体的な内容を示します。
(3)職務経歴書(実際にどのような業務を行っていたか)
在職証明書だけでは分からない、これまでの具体的な業務内容を示します。
3.日本人と同等以上の報酬であること
申請人が受ける報酬が、日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることを、資料によって示す必要があります。
【入管庁のホテル・旅館の不許可事例】
申請人:約15万円
同時期に採用され、同種の業務を行う日本人:約20万円
→ 報酬額が異なることについて合理的な理由も認められなかったため、日本人と同等額以上とは認められず不許可。
◆必要書類
・雇用契約書(労働条件通知書)
申請人に支払われる給与・報酬額を明らかにします。
◆補足資料
雇用契約書を見れば、給与の額は分かりますが、その額が「日本人と同等以上か」までは分かりません。
(1)賃金規程・給与テーブル(社内のルール)
会社の等級や給与の決め方と、等級などに応じた具体的な金額を示します。
(2)給与比較表
比較できる日本人従業員がいる場合は、申請人と日本人従業員の給与を比較した資料を示します。
(3)外部の賃金資料
社内に比較できる日本人従業員がいない場合は、必要に応じて外部の賃金資料を使って、申請人の報酬水準を説明します。
代表的な資料として、
- 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」
- ハローワークの求人票・求人相場
- 同業他社の求人情報・募集要項
などがあります。
※報酬の月額は、賞与などを含めた1年間の報酬の総額を12で割って計算します。通勤手当・扶養手当・住宅手当など、実費弁償の性格をもつもの(課税対象となるものを除きます)は、報酬に含まれません。
4. 会社の安定性・継続性・適正性
技人国の審査では、申請人が安定して就労活動を行えるかという観点から、所属する会社の安定性・継続性も確認されます。また、会社の事業が適正に行われているかについても確認されます。
◆必要書類
(1)登記事項証明書
会社の商号、本店所在地、役員などの基本情報を明らかにします。
(2)直近年度の決算文書の写し
会社の経営状況を明らかにします。
※新規事業の場合は、決算文書に代えて事業計画書を提出します。
※ 営業許可証・許認可証など(許認可が必要な業種の場合)
許認可が必要な業種では、必要な許認可を取得していることが求められます。
◆補足資料
(1)事業計画書(事業の見通し)
赤字決算や債務超過など、会社の安定性・継続性に懸念を持たれやすい場合には
赤字になった理由と今後の改善策
今後の事業内容・受注の見込み
売上・収支の見込み
などを記載した事業計画書を提出することがあります。
(2)取引先との契約書・注文書など(仕事の裏付け)
今後も実際に仕事や売上が見込まれることを、取引の裏付けとなる資料で示します。
(3)資金繰り表・預金残高証明書(お金の裏付け)
今後の資金繰りや現在の資金状況を示し、会社が事業を継続できる見込みを補足します。
5. 理由書
理由書では、個々の資料だけでは分かりにくい「なぜこの会社が、この申請人を、この仕事で雇うのか」を説明します。
具体的には、次のような内容を書きます。
- 会社の概要
- 人材の必要性
- 申請人の学歴・職歴・能力
- 担当する具体的な業務内容・業務量
- 学歴・職歴・能力と担当業務との関連性
- 申請人を採用した理由・採用に至った経緯
- 入社後の役割・キャリアプラン
など
まとめ
本人や会社にとっては当然の事情でも、
提出資料だけでは審査官に十分伝わらず、
後日、質問や追加資料を求められることがあります。
また、
追加説明の機会すら与えられずに、
不許可となることもあります。
例えば、ホテルで通訳を担当すると申請しても、
外国人客の人数や使用言語が分からなければ、
本当に十分な通訳業務があるのか判断できません。
そのため、
資料だけでは見えない事情や審査上疑問を持たれやすい事情は、
入管から問われなくても、
申請人側が主体的に説明し、
疑義を解消しておくことが重要です。
入管審査では、
許可要件に適合していることを立証する責任は、
申請人側にあるからです。
そのためのツールが、補足資料です。