③ 技人国ビザ / 相思相愛でも雇用できない?

任せたい仕事にぴったりの外国人材が見つかり、
本人も自社で働きたいと話している。

雇用契約は、当事者の合意で成立します。

しかし、日本で働くためのビザは、
当事者の合意だけで取得できるものではありません。

そこには、
入管による「厳格なフィルター」が存在します。

では、そのフィルターとは何なのか。
そして、なぜそのような仕組みが設けられているのか。

順に解説していきます。

※ 外国人と労働契約を結ぶ場合は、
「ビザが許可されたら効力が発生する」
とするのが一般的です。

目次

1. 2つのフィルター

▶ 業務内容のフィルター

予定している業務は、
技人国ビザであれば、
「一定水準以上の専門的な業務」でなければなりません。

▶ 質と量(金額)のフィルター

外国人側に求められるもの

学歴や実務経験の証明

大学(専門学校)を卒業しているか、
あるいは10年(又は3年)以上の実務経験があるか。

「専攻」と「業務内容」の関連性

「学校で学んだ専門知識(専攻科目)」と、
「予定している業務内容」が
関連していること。

会社側に求められる条件

「日本人と同等額以上」の報酬

外国人だから安く雇えるわけではありません。

※ 外国人を低い報酬で雇うことを認めてしまうと、
同じ仕事をする日本人の賃金相場まで下がってしまいます

「日本人と同等額以上の報酬」を払い続けられるか

受入企業には、
「事業の安定性及び継続性」
が求められます。

適正な労務管理を行う能力」があるか

例えば、労働基準法
(労働時間・休憩・休日・残業代など)を
遵守しているかなど

※ 現在の労務管理だけでなく、
過去に労働基準法違反などがあった場合にも、
ビザが不許可になるケースが
出てきています。

④「十分な業務量
専門業務を継続できるだけの仕事があること

※「労務管理に従事する」として申請したものの、
従業員が12名程度の会社では、
十分な業務量があるとは認められず、
実際には単純労働が中心になる可能性があるとして、
不許可となった事例があります。


2. 日本にいる外国人を採用する場合

すでに日本にいる外国人を採用し、
技人国ビザへの変更申請をする場合は、
これまでの在留状況なども確認されます。

▶ ルールを守っていたか

ア.現に有するビザに応じた活動を行っていたか
イ.素行が不良でないか
ウ.納税義務・届出義務を守っているか

例えば、
留学生がオーバーワークをしていた場合、
「ビザの活動(勉強)をおろそかにしていた」と評価されるだけでなく、
「素行不良」としても評価されることになります。

▶ 独立生計能力があるか?

具体的には、次の点が見られます。

ア.継続的な収入源、
たとえば仕事があるか。

イ.いざという時の蓄え、
つまり資産があるか。

ウ.社会保険に加入しているか。

独立生計能力を確認することで、
病気や失業などがあった場合にも、
外国人が日本で安定して生活できるかどうかが審査されます。

これは、本人の生活を守るだけでなく、
結果として、国や自治体に過度な負担が生じることを防ぐ意味もあります。

3. 「立証」するための資料

当事者が
「私たちは相思相愛です」
「専門的な業務を任せます」
「税金も払っています」
と口頭で主張するだけでは足りません。

会社と外国人本人が、
客観的な資料を集め、
要件を満たしていることを
立証する必要があります。

■ 外国人本人側

「卒業証明書」や「成績証明書」などにより、
その業務に従事できるだけの
知識や能力があることを示します。

■ 会社側

「決算書」などにより、
経営の安定性を示します。

決算書がまだ存在しない
新しく設立された企業の場合は、
「事業計画書」により、
事業の安定性や継続性を
説明する必要があります。

また、「雇用契約書」や「労働条件通知書」により、
日本人と同等額以上の報酬や
適正な労働条件であることを立証します。

■ これまでの在留状況を確認する資料

① 活動実績
留学生の場合は、出席証明書など。
転職の場合は、退職証明書など。

② 税金の支払い状況
住民税の課税証明書、納税証明書など。

③ 独立生計能力
健康保険の加入状況や、
年金の加入状況を確認する資料など。

■ 理由書

理由書は、
ビザの許可・不許可や、
在留期間の長さに影響するため、
重要な書類として扱われています。

特に、理由書では、
予定している業務に
「一定程度以上の専門性」があること、
「安定的・継続的に遂行できるだけの十分な業務量」があること、
「業務内容」と「本人の能力」との関連性を、
論理的に説明します。

また、
マイナスな事情がある場合は
その理由と再発防止策を、
誤解されやすい事情がある場合は
その事実がないことを、
それぞれ説明します。

詳しくは下記で説明しています。

👉 理由書が重要となる本当の理由

4. まとめ

契約は、
民法上は「当事者の自由な合意」で成立します。

しかし、技人国ビザは、外国人本人と受入会社が、
互いに相思相愛であっても、それだけでは許可されません。

① 予定している業務が、一定水準以上の専門的な業務か
② 外国人が、その業務を担うだけの力を持っているか
③ 会社が、適正な雇用を続けられるか

これらの基準を満たしてはじめて、許可されます。

また、すでに日本に在留している外国人を採用する場合は、
これまでの在留状況や独立生計能力も審査されます。

このような厳格な審査により、
本来「技人国」が想定していない単純就労が混入することを防ぎ、
結果として、国内の労働市場が守られています。

また、
外国人の独立生計能力を確認することで、
公的負担を防ぐことにもつながります。

よくある誤解

誤解①
外国人本人が要件を満たせば、ビザは下りる

実際には、
外国人本人だけでなく、
会社側の体制も審査されます。

会社に、
十分な業務量、
事業の安定性、
適正な労務管理がなければ、
不許可になることがあります。

誤解②
外国人が大卒であれば、どんな専門業務でも任せられる

実際には、
「専攻」と「業務内容」の関連性が問われます。

誤解③
外国人は、日本人より安く雇える

実際には、
技人国ビザでは、
日本人と同等額以上の報酬が求められます。

外国人を低い報酬で雇うことを認めてしまうと、
同じ仕事をする日本人の賃金相場まで下がってしまうためです。

誤解④
メインの業務が専門業務であれば、空き時間に単純労働を担当させてもよい

実際には、
一時的・突発的な手伝いであれば、
許容される余地があります。

しかし、
恒常化、つまりシフト化すると、
資格外活動に該当するリスクが高まります。

👉 ② 技人国で「現場作業」はどこまで許される?

誤解⑤
正社員でないと、技人国ビザは取れない

実際には、
契約社員、派遣社員、
委任契約や業務委託契約でも、
許可される可能性があります。

ただし、
収入・業務量が不安定な契約では、
許可が難しくなることがあります。

また、派遣の場合は、
派遣先での実際の業務内容も
審査の対象となります。

👉 技人国の派遣就労 /「雇っているのはうちではない?」

誤解⑥
技人国ビザには、日本語要件がない

実際には、
海外から呼び寄せる場合で、
日本語を使う対人業務に従事するときは、
原則としてN2相当の日本語能力が求められます。

ただし、
日本の大学や専門学校等を卒業した留学生は、
N2相当の日本語能力があるものとして扱われます。

誤解⑦
外国人本人の過去の在留状況は、採用時には関係ない

実際には、
すでに日本にいる外国人を採用する場合、
過去の在留状況も審査されます。

たとえば、
オーバーワーク、税金の未納、届出義務違反などがあると、
更新・変更で不利に評価されることがあります。

※ 補足
オーバーワークや税金の未納などにより、
更新・変更が難しい場合には、
いったん自発的に出国し、
海外から改めて新規申請を行う方法が、
検討されることもあります。


関連記事: ④ 技人国の理由書が重要な本当の理由|(後編)

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