任せたい仕事にぴったりの外国人材が見つかり、
本人も自社で働きたいと話している。
雇用契約は、当事者の合意で成立します。
しかし、日本で働くためのビザは、
当事者の合意だけで取得できるものではありません。
そこには、
入管による「厳格なフィルター」が存在します。
では、そのフィルターとは何なのか。
そして、なぜそのような仕組みが設けられているのか。
順に解説していきます。
※ 外国人と労働契約を結ぶ場合は、
「ビザが許可されたら効力が発生する」
とするのが一般的です。
1. 2つのフィルター
▶ 業務内容のフィルター
予定している業務は、
技人国ビザであれば、
「一定水準以上の専門的な業務」でなければなりません。
▶ 質と量(金額)のフィルター
外国人側に求められるもの
① 学歴や実務経験の証明
大学(専門学校)を卒業しているか、
あるいは10年(又は3年)以上の実務経験があるか。
② 「専攻」と「業務内容」の関連性
「学校で学んだ専門知識(専攻科目)」と、
「予定している業務内容」が
関連していること。
会社側に求められる条件
① 「日本人と同等額以上」の報酬
外国人だから安く雇えるわけではありません。
※ 外国人を低い報酬で雇うことを認めてしまうと、
同じ仕事をする日本人の賃金相場まで下がってしまいます。
② 「日本人と同等額以上の報酬」を払い続けられるか
受入企業には、
「事業の安定性及び継続性」
が求められます。
③ 「適正な労務管理を行う能力」があるか
例えば、労働基準法
(労働時間・休憩・休日・残業代など)を
遵守しているかなど
※ 現在の労務管理だけでなく、
過去に労働基準法違反などがあった場合にも、
ビザが不許可になるケースが
出てきています。
④「十分な業務量」
専門業務を継続できるだけの仕事があること
※「労務管理に従事する」として申請したものの、
従業員が12名程度の会社では、
十分な業務量があるとは認められず、
実際には単純労働が中心になる可能性があるとして、
不許可となった事例があります。
2. 日本にいる外国人を採用する場合
すでに日本にいる外国人を採用し、
技人国ビザへの変更申請をする場合は、
これまでの在留状況なども確認されます。
▶ ルールを守っていたか
ア.現に有するビザに応じた活動を行っていたか
イ.素行が不良でないか
ウ.納税義務・届出義務を守っているか
例えば、
留学生がオーバーワークをしていた場合、
「ビザの活動(勉強)をおろそかにしていた」と評価されるだけでなく、
「素行不良」としても評価されることになります。
▶ 独立生計能力があるか?
具体的には、次の点が見られます。
ア.継続的な収入源、
たとえば仕事があるか。
イ.いざという時の蓄え、
つまり資産があるか。
ウ.社会保険に加入しているか。
独立生計能力を確認することで、
病気や失業などがあった場合にも、
外国人が日本で安定して生活できるかどうかが審査されます。
これは、本人の生活を守るだけでなく、
結果として、国や自治体に過度な負担が生じることを防ぐ意味もあります。
3. 「立証」するための資料
当事者が
「私たちは相思相愛です」
「専門的な業務を任せます」
「税金も払っています」
と口頭で主張するだけでは足りません。
会社と外国人本人が、
客観的な資料を集め、
要件を満たしていることを
立証する必要があります。
■ 外国人本人側
「卒業証明書」や「成績証明書」などにより、
その業務に従事できるだけの
知識や能力があることを示します。
■ 会社側
「決算書」などにより、
経営の安定性を示します。
決算書がまだ存在しない
新しく設立された企業の場合は、
「事業計画書」により、
事業の安定性や継続性を
説明する必要があります。
また、「雇用契約書」や「労働条件通知書」により、
日本人と同等額以上の報酬や
適正な労働条件であることを立証します。
■ これまでの在留状況を確認する資料
① 活動実績
留学生の場合は、出席証明書など。
転職の場合は、退職証明書など。
② 税金の支払い状況
住民税の課税証明書、納税証明書など。
③ 独立生計能力
健康保険の加入状況や、
年金の加入状況を確認する資料など。
■ 理由書
理由書は、
ビザの許可・不許可や、
在留期間の長さに影響するため、
重要な書類として扱われています。
特に、理由書では、
予定している業務に
「一定程度以上の専門性」があること、
「安定的・継続的に遂行できるだけの十分な業務量」があること、
「業務内容」と「本人の能力」との関連性を、
論理的に説明します。
また、
マイナスな事情がある場合は
その理由と再発防止策を、
誤解されやすい事情がある場合は
その事実がないことを、
それぞれ説明します。
詳しくは下記で説明しています。
4. まとめ
契約は、
民法上は「当事者の自由な合意」で成立します。
しかし、技人国ビザは、外国人本人と受入会社が、
互いに相思相愛であっても、それだけでは許可されません。
① 予定している業務が、一定水準以上の専門的な業務か
② 外国人が、その業務を担うだけの力を持っているか
③ 会社が、適正な雇用を続けられるか
これらの基準を満たしてはじめて、許可されます。
また、すでに日本に在留している外国人を採用する場合は、
これまでの在留状況や独立生計能力も審査されます。
このような厳格な審査により、
本来「技人国」が想定していない単純就労が混入することを防ぎ、
結果として、国内の労働市場が守られています。
また、
外国人の独立生計能力を確認することで、
公的負担を防ぐことにもつながります。
✔ よくある誤解
誤解①
外国人本人が要件を満たせば、ビザは下りる
実際には、
外国人本人だけでなく、
会社側の体制も審査されます。
会社に、
十分な業務量、
事業の安定性、
適正な労務管理がなければ、
不許可になることがあります。
誤解②
外国人が大卒であれば、どんな専門業務でも任せられる
実際には、
「専攻」と「業務内容」の関連性が問われます。
誤解③
外国人は、日本人より安く雇える
実際には、
技人国ビザでは、
日本人と同等額以上の報酬が求められます。
外国人を低い報酬で雇うことを認めてしまうと、
同じ仕事をする日本人の賃金相場まで下がってしまうためです。
誤解④
メインの業務が専門業務であれば、空き時間に単純労働を担当させてもよい
実際には、
一時的・突発的な手伝いであれば、
許容される余地があります。
しかし、
恒常化、つまりシフト化すると、
資格外活動に該当するリスクが高まります。
誤解⑤
正社員でないと、技人国ビザは取れない
実際には、
契約社員、派遣社員、
委任契約や業務委託契約でも、
許可される可能性があります。
ただし、
収入・業務量が不安定な契約では、
許可が難しくなることがあります。
また、派遣の場合は、
派遣先での実際の業務内容も
審査の対象となります。
誤解⑥
技人国ビザには、日本語要件がない
実際には、
海外から呼び寄せる場合で、
日本語を使う対人業務に従事するときは、
原則としてN2相当の日本語能力が求められます。
ただし、
日本の大学や専門学校等を卒業した留学生は、
N2相当の日本語能力があるものとして扱われます。
誤解⑦
外国人本人の過去の在留状況は、採用時には関係ない
実際には、
すでに日本にいる外国人を採用する場合、
過去の在留状況も審査されます。
たとえば、
オーバーワーク、税金の未納、届出義務違反などがあると、
更新・変更で不利に評価されることがあります。
※ 補足
オーバーワークや税金の未納などにより、
更新・変更が難しい場合には、
いったん自発的に出国し、
海外から改めて新規申請を行う方法が、
検討されることもあります。
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